今回は、坂本光司氏の『日本でいちばん大切にしたい会社』を読みましたので、内容をまとめます。
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書かれたのは2008年と10年以上前ですが、現在の企業のあり方を予想していたかのような本です。
SDGsやESG投資など持続可能な社会・経済を考える上で企業のあり方を考えさせてくれます。
オススメ度 7/10
先日読んだデービッド・アトキンソンの『日本人の勝算』では、中小企業の生産性の低さが日本の問題点と指摘していました。
この本で挙げられている企業は、生産性+社会に「いいこと」を実践している点で、多くの企業の模範になるでしょう。
この本の章立てについて
第1部 会社は誰のために?
第2部 日本でいちばん大切にしたい会社たち
1 障害者の方々がほめられ、役立ち、必要とされる場をつくりたい
日本理化学工業株式会社
2 「社員の幸せのための経営」「戦わない経営」を貫き、四八年間増収増益
伊那食品工業株式会社
3 「人を支える」会社には、日本中から社員が集まり、世界中からお客様が訪ねてくる
中村ブレイス株式会社
4 地域に生き、人と人、心と心を結ぶ経営を貫いていく
株式会社柳月
5 「あなたのお客でほんとうによかった」と言われる、光り輝く果物店
杉山フルーツ
著者について
※アマゾンの著者紹介からの抜粋です。
坂本 光司氏
福井県立大学教授・静岡文化芸術大学教授等を経て2008年4月より法政大学大学院政策創造研究科(地域づくり大学院)教授及び法政大学大学院イノベーションマネジメント研究科(MBA)客員教授。
他に、国、県、市町や商工会議所等団体の審議会や委員会の委員を多数兼務。
専門は中小企業経営論・地域経済論・産業論
『日本でいちばん大切にした会社』はアマゾンでも200件以上のレビューが付いているとおり、大きな反響を呼び、このシリーズは現在7つまで続いています。
この本をオススメしたい人
この本の概要は?
会社は誰のものなのか?
多くの企業で不祥事が増えています。
この本が書かれた2008年でもそうですが、2020年の今はさらにその傾向が強まっているように思えてなりません。
著者はその根底には、会社の経営者が「会社とは誰のものなのか?」を理解していないからだと言います。
会社は生まれた瞬間から、経営者やその親族などの一部の人のものではなく、広く社会のものと考えるべきなのです。
この点を理解していない会社の経営者が、非常に多くなっています。
会社は、従業員やその家族、顧客や地域社会など、その企業に関わるすべての人々のものなのです。
会社経営の使命と責任
筆者は、会社には「5人に対する使命と責任がある」と言います。
それを果たさなければ、本当の経営ではないのです。
- 社員とその家族を幸せにする
- 外注先・下請企業の社員を幸せにする
- 顧客を幸せにする
- 地域社会を幸せにし、活性化させる
- 自然に生まれる株主の幸せ
ポイントとしては、最初に社員と家族が来ていること。
次は、下請けなどにも責任を持つこと。
顧客ファーストではありません。
顧客を満足させるためには、その前に2つのステップがあるのです。
顧客満足を考える社員が、自社で働いていることを幸せに考えられなければ、絶対に顧客が満足することはないのです。
本当にいい会社とは?
筆者がいう「本当にいい会社」とは、継続する会社です。
業績重視の会社ではありません。
「継続すること」が企業の社会的責任なのです。
目先の利益にとらわれず、地道な経営を続け、社員が楽しく働くことができるようにすることを目指すべきです。
経営がうまくいかない原因は「内側」にある場合が、99.9%だといいます。
「不況だから」、「都会でないから」は言い訳にすぎず、社内の人材を活かして目の前にあるヒントをいかに掴めるのかにかかっています。
いい会社の実例
第2部はいい会社の実例として、さまざまな企業の紹介がされています。
障害者雇用を進める「日本理化学工業株式会社」(チョーク)、辺鄙な土地で事業を行う「中村ブレイス株式会社」(義足)など。
個人的には、「日本理化学工業株式会社」の章の中で、なぜ障害者は施設にいる方が快適な生活ができるのに、働くことに喜びを感じているのか表している部分が印象的でした。
幸福とは、①人に愛されること、②人にほめられること、③人の役に立つこと、④人に必要とされることです。
そのうちの②人にほめられること、③人の役に立つこと、そして④人に必要とされることは、施設では得られないでしょう。
この3つの幸福は、働くことによって得られるのです。
まとめ:「いい会社」と「よい会社」の違い
業績拡大が企業の目指すべき姿と考えている人に、この本は強烈なカウンターを与えます。
一般的な経営戦略やマーケティングといった論理的な手法とは、また違った角度で企業のあり方を考え直させてくれる点で新鮮です。
少し古い本ですが、書いてあることは時代を先取りしています。
ストーリーへの共感や持続可能な経営など、取り上げられている中小企業の仕組みは非常に最先端だったわけです。
あまり知らないけど優れた中小企業があることを学ばせてもらいました。
最後に、本書で「いい」と「よい」の違いを説明していた部分をちょっと長いですが引用します。
人間でも、「この子はいい子だね」と言うのと、「この子はよい子だね」と言うのでは、同じことのように聞こえますが、響きが全然違います。
「いい子」という言葉からは、ほんとうに素直で、心根がやさしいといったニュアンスが受け取れます。
一方「よい子」というのは、いいことをよく聞く子とか、勉強ができる、頭がいい子というイメージがあります。(中略)
「よい会社」を目指すのであれば、増収・増益を続ければそれで十分かもしれません。
逆に言えば、それを目指すのは、会社として当たり前のことです。それだけでは足りないと思うから、あえて「単に経営の数字ではなく、会社を取り巻くすべての人々が『いい会社だね』といってくださる会社、社員自身が会社に所属することの幸せさをかみしめられる会社」を社是にしているのです。
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