2021年に読んで良かった本を3冊紹介します。
『ブラック霞が関』千正康裕(著)
噂は最近いろいろ聞こえてきますが、実態がよくわからなかったため買ってみました。
霞が関で働く日本の官僚が、いかに非効率・不要な業務に追われ過酷な労働環境に陥っていることが指摘されています。
国民のために官僚の専門性を発揮できるよう霞が関の慣例を是正することを提案しています。
基本情報
公務員=楽な仕事というイメージとの乖離
もともとは公務員というと守られた立場で、ブラック企業とは正反対の立場にあるイメージがありました。
しかし、最近は、最近は官僚の激務な状況を耳にすることがありますし、知り合いの公務員の話では決してホワイトな労働環境ではなさそうという印象に変わっていました。
この本を読むと、いかに過酷で理不尽な環境のもと、日本の政策が決定・実行・運用されているのかがわかります。
本書で度々指摘されているように、官僚が本来全力で挑むべき課題に取り組むことができず、本領を発揮できない環境は、我々国民にとって大きな損失になっていることを気付かされました。
答弁資料を大量印刷、自転車で霞が関を走り回ったり、無駄な待機時間、無計画な国会日程、一部議員の意識の低さなど、日本で最も優秀な人達が集まるはずの場所がこんなに無駄に使われていたかと思うと唖然としました。
もっと国民のために働ける環境になるよう目を向けることが必要ですし、優秀な人が集まり、活躍できる仕組みに改革する必要性を本書から学びました。
『暇と退屈の倫理学 増補新版』國分功一郎(著)
タイトルだけで面白そうで、読みたくなります。
10年ほど前に販売した時から読もう読もうと思って、ここまで手を出さなかった本。
増補強板というのが出ているも知りませんでした。
新年、本屋で見かけて購入することに。
哲学書ですが、非常に学際的です。しかしながら、歯切れのよい文章と、何度も重要な点を繰り返して記載してあるのであまり難しさは感じませんでした。
やっぱり、もっと前に読んでおけばよかった・・・(笑)
基本情報
浪費せよ!消費するな!
「暇」と「退屈」は似ているようで違う概念です。
「暇」とは、時間があるという客観的な概念。
対して、「退屈」は主観的な概念。
現代人は、「暇」ではないけど、「退屈」であるという不思議な状態に陥っている人が多いように見受けられます。
仕事に忙殺されているといいながらも、休暇があればなんか退屈・・・。
なんでこんな状態になっているんだろう?というのがこの本の出発点です。
これをハイデガーやラッセルなど過去の哲学者を批判的に紐解いていくとともに、歴史学、経済学、生物学など広い範囲の学問の知識を集結させ、解明していきます。
本当に壮大な本になっています。
人間は、さまざまな環境に自分を適応させる能力があるがゆえに、退屈が生まれるであり、退屈になるのは人間の運命のようなもの。
消費による退屈解消は終わることがなく、満足も得られません。
消費ではなく、浪費としてものを楽しむ能力を訓練することが必要なんだ!という結論になっています。
ただ、結論を読むだけではこの本の持つ意味は理解できないと筆者は釘を差しています。
結論に至るまでの考えを読み、思考することが暇と退屈の倫理学を考える上で最も重要な点だそうです。
本のキャッチコピーは、「わたしたちはパンだけでなく、バラも求めよう。生きることはバラで飾られねばならない」となっていました。
バラで飾るためにはバラを理解するための訓練(知識習得)が必要なんだという観点が、面白いと思いました。
暇と退屈を区別し、人間であることを楽しむためのきっかけを与えてくれる本だと思います。
『ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論』デヴィッド グレーバー (著)
こちらもとても刺激的なタイトルの本。
現在、非常に話題になっている本です。
- ビジネスリーダー1万人が選ぶ 2020年下半期のベストビジネス書
- 紀伊国屋じんぶん大賞2021発表 大賞
1月の100分de名著は、『人新世の「資本論」』の斎藤幸平氏がゲストで、その時にも触れられていたのが本書。
基本情報
本当に必要な仕事とは?センセーショナルだが納得感あり
筆者が定義するブルシットジョブとは、次の通り。
本人でさえ正当化できないくらい完全に無意味・不必要で有害でもある有償の雇用の形態であるが、本人はそうではないと取り繕わなければならないように感じている仕事
本来、技術などの発展が進むに連れ、人が労働する時間は少なくなるはず。
それなのに、人を管理したり仕事のための仕事が増え、本当は社会にとって必要でない仕事(ブルシットジョブ)がアチラコチラで生まれています。
さらに悪いことは、管理する立場の人は給料が高い一方、エッセンシャルワーカーほど社会的立場が弱く、給料も低いこと。
コロナ禍で世の中にブルシットジョブがいかにあふれているのか目の当たりしています。
逆に、エッセンシャルワーカーは過酷な状況の中、社会に欠かせない仕事をしています。
我々がやっていることは、ブルシットジョブなんじゃないかと薄々気付いていたことを、この本はド直球に切り込んでくるのが面白い点。
「価値」と「諸価値」の概念についても述べられていますが、社会に欠かせない仕事の方が低レベルとみなされ、よくよく考えれば、いびつな社会構造になっていることを思い知らされます。
個人的には、日頃から僕がやっていることはブルシットな仕事と思いながら業務をこなしていました。
この本は爽快感を持って読めるとともに、このままではまずいという危機感を感じさせてくれました。
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